そして熊本で飲み合う

熊本に戻ってきて、内定者懇談会をこなした。非常にびっくりしたこと、感じたこと、さまざまな感情が入り混じる懇談会(飲み会)でした。でもはっきりいっておく。俺はこの企業に行きたい。行ってみたい。その経緯は次に述べる


熊本に到着し、母に送られ懇談会に向かったのは5時30分ほどしたからだった。懇談会は7時からであり、ひとまず到着したのは6時ほどだった。1時間ほど余裕がある。


久しぶりに熊本の街をぶらぶらと歩き、目に付いたのはストリートミュージシャン。俺もそんなに音楽に詳しいわけではなく、評価するに値する身分ではないのだが、これはなかなかの腕前。声はビブラートかかってるし、いかんせん、ボーカルが好印象。ある番組のある企画で「わらってはいけない」シリーズに出演したら、笑っていると思われるような笑顔をところかまわず振りまいていた。彼らは出世するだろう。俺が太鼓判を押す。


そんなこんなしているうちに、懇談会の時間ともなり、集合兼、会場であった紅蘭亭に到着する。中に入ってみると、案の定皆スーツかもしくはそれに近い黒いシュールな服装であった。そんな中混じったジーパン、サンダル、青いシャツの俺は完全に浮いてた、としか言いようがない。でも、こんなおもっ苦しい雰囲気にひとつの緩和剤くらいは必要だろう。いや、必要であってほしい。そうでなければ、俺という存在は単なる場違いの馬鹿で、「不要物のみ吸収するブラックホール」というものがあれば、吸い込まれそうな勢いだった。


その後、一応私服のしかも軽装できたことを誤りつつ、開会。ここでびっくり仰天発言。どうやら今年の春季採用は4人、それも役割は4つで、1つにつき1人しか採用していない。


つまりだ、俺はそのうち営業という職業の中で、ただ一人選ばれたことになる。話によると、200人を超えるエントリーがあったそうなので、単純に割れば1役割あたり50。俺は50人を超越し、かつ採用されたことになるただひとりの新規営業担当であったことが判明した。


それまで10人ほどの採用という話を聞いていたので、せいぜい倍率は10倍程度とおもっていたがどっこい。50倍あった。俺にそんな中を超越するような光り輝く才能も、技術も、能力、知識。それに機転なんてない、と思っていたのだが、選ばれたらしい。これも笑顔の力。笑顔とは、大事なことだねえ。みんな笑顔で生きていくといい。人生とてもスムーズになる。就職活動も。


少し、俺に対する期待という重圧を受けながら、やはり感じたのは「そこまで俺を見込んでもらっているんだ」というありがたい気持ちである。出てくるな、という考えをよそに、われさきにわれさきに、というこの気持ちを抑えることができず、気づいたら調子に乗って飲みすぎていた。


おそらく10杯ほどのビールを飲んだ後、2次会としてバーに場を移し、そこから4杯ほどなんか飲んだ記憶がある。それにしても、この会社。妙にテンション高いし、なぜだろう。皆楽しそうだ。本当に心底楽しそうに仕事の話をするのである。不動産なんて、本当に売りにくい商品であり、本来は欝に入ってもおかしくないような仕事をしているだろう社員の方々はとても楽しそうなのである。


なんというか、今回の懇談会に参加して、よかったと思えた。というのは、職場の雰囲気というものをなんとなく肌で実感したからである。ところで、やはり営業という仕事はとてもしんどいもののような感じを肌でうけた。しかしだ。それ以上に営業担当の人は、楽しそうに、それも誇らしげに自分の仕事のことを話している。


これから感じるのは、つまり「いい会社なんだろう」ということである。俺はこの会社にとって何ができるのだろう。100人、いや、百数十名のなかから選ばれた俺は、この会社側から何を期待されているのだろう。何を行えば、どのように行えば、どのように仕事をすれば、それに応じることができるだろうか、と、いつのまにか考えていた。


そこに、「公務員」という言葉が入る隙がないほどに。



俺はこれから何をすべきなんだろう。